立ち尽くす事しか出来ないアタシ…。

「さくらは、モノじゃねーよ。」
「そんな事分かってる。」
「じゃー、もっと大事にしてやれよ。次困らせたら、オレがもらうから。」

安っぽいドラマのような言葉を残して
この場から立ち去るタカアキ。

「さくら…。」
「はい」

もう、アタシの事なんか
嫌いだよね……?


何も言わない汰壱に
アタシは口を開いた。

「嫌いになった?」
「……うん。」

やっぱり……。

「ごめんね。それじゃ」

泣きそうになるのを堪えて
アタシは直ぐ様この場から消えたかった。

「でも俺は勝手なんだよ。」
「え?」

背を向けたアタシに、
汰壱は言葉を投げる。

アタシの歩く足が止まると、
すぐに汰壱はアタシを後ろから抱き締めた。

「お前の事、少しだけな。」

どういう意味……?

「嫌いになったの。でも、嫌いな所カバー出来るくらい、好きなとこの方が多いから…。」

え…?

「それって………あの…」
「知りたい?」

アタシはコクコクと頷いた。

「じゃー顔こっち向けろ」

「むり…」

無理だよ……
いまアタシきっと、耳まで真っ赤。
泣きそうなの堪えてるから、
絶対変な顔だし…

「早く。」
「………。」
「おい。こっち向け」

今度は首を横に振るアタシ。

そんなアタシに汰壱はため息をついて
強引にアタシの顎をつかんで
自分の方に向けさせた。

アタシは目だけを横に向けて
恥ずかしさをなんとか減らそうとした。

「はい、目ぇ見て。」

汰壱を見ていなくても
見つめられていると分かる程
視線が痛かった。

そうなったらもう
逆らえない…

アタシは言われるがまま
汰壱の目に視線を変えた。

「よしよし、今度は目ぇ閉じて。」

アタシはゆっくり目を閉じた。