自分の危機感のなさを悔やむ。

けれど、今は身じろぎもせずに、何者かがたてる衣擦れの音に耳を澄ます。

何者かは、少しの間、静かだった。

立ち止まっていたようだ。

それから、暗闇の中を、真っ直ぐにこっちに向かってきた。
 
いや、真っ暗じゃない。

きっちりと閉まっていないカーテンの隙間から、月明かりがさしこんで、ぼんやりと部屋の中を照らしている。
 
留守電の明かりに気を取られていて、さっきはまるでそれに気付かなかった。