『オレはエイジュだ』

もう一生聞きたくない声が、突然頭の中で再生された。

ハッと、体がのけぞる。

英樹だ。

『英樹を音読みするとエイジュになる』

そんなことを、英樹が言っていたことがある。
 
『やっぱりあいつだったのか』

憎しみがこみ上げてきた。
 
『今になってまで、何で?』
 
と、扉が閉まるかすかな音を浩之の耳がとらえた。
 
何者かが、部屋に入って来た気配がある。
 
そういえば、鍵をかけるのを忘れた。