彼女は気付いているからこそ、私にきいたのだろうか?

「だから、完璧であろうとするあなたは欠けている部分があって魅力的よ」と笑った彼女に確信する。

「でもね、あのミロのヴィーナス。あれは両腕が“無いからこそ”魅力的なのかもしれないけれど、私は両腕が“無くても”魅力的なものだと思っているの」

「どういうこと?」

半分の角砂糖を1つずつ持って私に見せる。

「つまりね、欠けていない部分がとても素敵で魅力的だからこそ」

彼女は私から見て右の手の角砂糖を持ち上げる。
彼女の中で、あれは欠けていない部分。

そして、

「欠けている部分も魅力的に見える、ってことよ」

今、持ち上げた左の手の角砂糖は欠けている部分なのだろう。

ぱくっと2つとも口に入れた彼女に私は煙草を出そうとバックをあさっていた手を止めた。

「どっちも甘いわ」

少し困ったように眉を下げた彼女の笑顔が、とても魅力的だと思った。