美雪の全てをひっくるめて守って欲しい……そう思っていたけど……。



子供心に傷付いた美雪の悲しみは余りに深く、僚二の事を忘れさせるなんて無理な話だ。

でも、それって、辛くは無いのか?

自分ではない誰かを想って泣いてる愛しい人を目の前にして、『自分の事だけ考えて欲しい』……そう虚しくなったりは、しないのか?

きっと、俺にはその覚悟が無かったから、この4年間、見守る事しか出来なかったんだ。



「僚二は美雪の目の前で、居なくなりました。美雪は僚二の事を、きっと一生忘れない。2人の間には誰も入り込めない……それが分かっていて傍に居るのは、辛くは無いんですか?」



俺が本心からそう問い掛けると、沖野先生は今までの『教師』の顔ではなく、1人の『男』の顔をした。