そして、その様子に改めて月の世界の約束事を思い出した俺は、腕を引っ込めて謝罪した。


「すまない。
触れるのは違反だよな。
話しかけているだけでも、かなり危ないラインだってのにな。」


そう言う俺に、そいつは涙を自分でぬぐいながら、小さく笑みを浮かべた。


「変な『月の使い』ね。
初めて見るわ、あなたみたいな人。」


そんなふうに言いながら、そいつは自分を指さして言った。


「あたしの名前はミウ。
お使いの名前は?」


「コウ、だ。」