だけど、理由ありな様子で路端に立ち尽くしたまま、痛むかのごとくに胸を押さえて涙を流す女の子をそのまま見過ごして行けるほど、俺は無神経には出来ていなかった。


だから、俺にとってその行動は悩む必要などもないぐらい、当たり前の行動だった。


「俺はお前が泣いている理由を聞いた方がいいのか?」


禁忌と呼ばれる程厳しいわけじゃなかったが、月の世界の決まり事である月の使いと月の乙女の交流を禁じる約束事を無視する形で、俺はそいつに話しかけた。