たなびく雲の色は一刻毎にその色を変えながらも、厚く空一面を覆っていた夕刻までの様子とは一変した表情を見せていました。


切れ間から最後の残照を投げ落としながら西の空にその身を隠す太陽に付き従う献身的な従僕のように、雲の群れは煌めく光と共に大空という名の舞台から立ち去って行きます。


そうして、わたしの見つめる前にゆっくりとその姿を現したのは、月の光が描き出す、静かな銀色の世界なのでした。


そう。


わたしが続く雨にやきもきしながらずっと空を見つめていたのは。


今夜が満月の夜だからなのでした。