「なあ。」


突然、耳元で聞こえた声に、わたしは飛び上がらんばかりに驚きました。


「だっ、誰っ!」


月の光を浴びながら、夜空を駈けていた無防備な心を慌てて取り戻し、瞬きを繰り返しながら、わたしは声の主を探しました。


振り返って、キョロキョロと見回してみても、わたしの部屋には誰かの居る気配はありません。


「どこ探してんだよ。こっちだよ。」


また、声が聞こえます。


そして、それは。


わたしが月を眺めていた。


窓の外から聞こえてきていたのでした。