「木枯らしは哀しいお話の上に吹いているのね?」


わたしがそう訊ねると、皎は頷いて言いました。


「哀しい話は聞きたくないか?」


わたしを気遣って言ってくれるその言葉が、わたしの心に暖かく染み渡ります。


そして、それだけで。


わたしは皎に返答できるだけの心の力を得たのでした。


「いいえ。
あなたが話してくれるお話なら、どんなお話でも聞きたいわ。」


本当ならば、わたしのような立場の女性は心を穏やかにするようなお話や音楽を好むべきなのでしょうが、あえてわたしはそんな風に答えました。