『あのさ…』
(ドクン―…)
つかまった手が、熱い。
『吉沢…俺とっ…』
ガタンッ―…図書室のドアが音を立てて、前川くんが我に帰った。
『あ…突然、悪いなっ』
『う、ううん…』
ドアを横切った影は、まるで。
(マコト先輩…?)
『そろそろ帰ろっか』
『……』
『吉沢?』
『えっ、うん』
(いけない。なに考えてんだろう…)
『うっわ、電気消したら真っ暗じゃん』
『ほんとだ。早く帰…』
(――…っ)
歩きだしたあたしを抱きしめる、前川くん。
『少しでいいんだ』
(なんで?なんで…
なんかヤダっ…)
ドンッ―…突き飛ばして、逃げてしまったんだ。