「野郎共!!酒は持ったか!!船に戻るぞ!!」

耳の近くでロウの大声が聞こえてキーンと耳鳴りがした。「おお!!」と言う妙にハイテンションな男達の声が聞こえて、身を起こす。


今なら逃げれる。
落ちたってロウの上からだから痛いだけで済む。


「話せ馬鹿あ!!」

ガブリッッ!!勢いに委せてロウの耳朶をこれでもかと咬んでやった。

「いいいいっっっ!!」

悲痛な声。声は上げたもののロウが私を離すことはなかった。


周りにいる男達が海岸に向かって走る中、ロウの足は立ち止まったままで、私は進行方向と逆の方を向いているから状況がよくわからない。



「その子を離しなさい」

ハッとした。目を見開いて耳をすます。

「なんだお前」

「あたしはその子の御守騎士。フィナンシェ国の王子直属騎士よ」


……シエナ!!