シエナから目を離さなかった自分を褒め称えたい。

私はそう頷きシエナをすり抜けてベッドに腰かけた。


シエナは私がいた壁から顔をこちらに向けることはなく、何もない壁を見たまま。


どこか落胆したようなその背中を見て思うことは一つ。



はじめに貴方が私を傷付けたんだ


私は一度シエナから視界を外してもう一度シエナの背中を見た。


「人魚伝説のお城は実在するんだよね。
夜陰さんは一つめの雨がそこにあると言ってた。これからどうしたらいいかわからないけど」



私は、この世界に長くいてはいけない。
早く4つ揃えて、私の世界に帰ることを願う。


「わからないけど、何よ?」

「ううん何でも無い。話し聞かせてくれてありがとう」



まるで人魚伝説を話したこと以外の時が無かったような振る舞いに、シエナは振り返り私を戸惑いの目で見つめる。