「や、」

喉の奥から少し出た声


「やめろ馬鹿オカマ!!何でそんなに近いのよ!!」

「なっ」



シエナは目を見開いていつものように言い返すことさえ忘れたようだった。



「離れてよ!!近付かないで!!」


ドンッと押すとシエナは一歩下がる。


もうやだ、何か嫌だよ!!



パニックになっていた。胸が締め付けられるように痛い。


シエナは女の子でしょう!?

どんなに仲が良くてもなんか変だよっ



耐えきれずに訳もわからず一目散に走り出した。


「君花!!」

「こないでっ」



追いかけて来たシエナに怒鳴り付けて獣道でもない森の中に足をすすめては転びそうになりながら走った。



「ガルル」


それは、体の反射神経全てが危険だと知る獣の声だった。