クロムのご機嫌な声に重なるように聞こえた不機嫌な声。

少しでも顔を動かせば触れてしまいそうで怖くて目だけ動かすと、殺気立ったシエナがいた。



本日二回目ってやつだな。うん


と、頷くとゴンッと額をぶつけた。

クロムも痛そうに鼻を押さえて私から身をひく。


「わざと?」

「ち、違います!!」




慌てて立ち上がろうとするとシエナにグイッと引っ張られた。



「あたしのよ、触らないでくれる」

「すまないね。つい」



私の肩に抱くように回されたシエナの手が強くて恥ずかしさに顔が赤くなった。


男のシエナは嫌いなの!!



「何シテル。行くヨ」



夜陰の声に、シエナはキッとクロムを睨んでからそのまま来た道戻っていった。