君花の白い手が生み出すその音は、まるで引きずり込むように自分の感覚に直接響いた。
「ねえ」
「ン?」
「何でバクに寄ったの?馬を預けるだけで良かったでしょう」
夜陰はシエナを少しチラッと見て君花に視線を戻した。
「君花ガここをミテドンナ反応するかキニナッタから」
なっ、とシエナは目を見開いて夜陰を見る。
「ヤッパリ思った通りの反応ダッタ。ツマランナ」
どういうことだと口がでそうになる自分を押さえてシエナは肩を竦める。
「案外あんた君花が好きなのね」
「サアどうだろう」
シエナは「駄目よ」とだけ呟いて君花に目を向けた。どうやら演奏が終わったらしく、拍手に囲まれて驚きながらもクロムにはにかんでいた。