***

完全に日は山頂に出た。

今頃町では皆それぞれの朝を迎えていることだろう。

私達はというと、やっと山脈の奥まで入って清く流るる小川のもとで休憩をとっていた。



チャプンと小川に手を入れると冷たい山水に眠気がひいた。


「こっからは歩きになりそうだな」

少し後ろではシンと夜陰がこれからのことを話していて、シチは色んな草を摘んでいた。



シエナは私のすぐ後ろの木に背を凭れさせて腕を組んでいる。


「ねぇ、君花」

「なに?」



私はシエナに背を向け屈んで小川の水に手を浸していた。



「隊長に何されたの?」


隊長というのはシンドリーのことだ。何された、なんて聞くから私はジャブンと小川の水を顔にかけた。


危ない思い出すところだった。