シエナの男の胸を叩いてもシエナは退かない。
男のシエナは嫌なのに


「君花……」


体がビリッと痺れた。
そう囁いたその声は、シエナのものであって、初めて聞く男の声。


シエナは私の唇から唇を離すと今度は首筋に舌を這わせた。



「ゃ…っ」


シエナがシエナじゃない。目を開けてしまえば男のシエナを見てしまう気がして開けられない。


「やめてっ」


抵抗する言葉も体も、シエナは全てきかない。



「……っ…!」


涙がポロリとソファーに落ちた時、バッとシエナが私から身を離した。

そしてそのまま身を起こす。



「あんたなんで下着なのよ」


どこか切羽詰まったシエナの声に、はだけていた紺色のローブの袷を摘まんで私も体を起こす。