「泣かないでよ」


グイッとシエナの方に体重を傾けさせられた。受動態だから、私から行った訳じゃないから。


「泣いてないよ馬鹿」

「馬鹿はあんたでしょ馬鹿女」

「じゃあシエナは馬鹿オカマ」



ゴンッと鈍い音がして、ジンジン頭が痛くなった。頭突きとかやめてよ。


やりかえそうと思ったけど痛いからやめた。



「私どうすればいい?」

「そうねー…君花が今しなきゃいけないのは旅の準備」

「馬車?」




馬車は本当に嫌だなとおもってシエナの向こうに夜陰を見た。


「馬車はダメ。目立つから。馬かトホ」

「私馬乗れません」

「ウン誰かにノセテもらって」



そーゆうことか、と前を向く。シエナの手はいまだに私の肩にのっかってる。
まあいいか。


船はゆっくりだと酔うけれどクルーザーとかで飛ばしたら全然酔わない。

馬は速いから、だから多分大丈夫だよ。うんと自分に頷くと向かいのシチがブッと笑った。