─だけど…
か細い声は続いた。
『だけど、恋は人を殺しちゃった!あの人にも家族がいるのに!恋と同じくらいの男の子もいたの!恋は生きてていいの?幸せでいていいの?恋はみんなといて、本当にいいの!?あの時恋が死ねば─…』
バシン!
音がして恋の続く言葉を
無理矢理止めた。
母さんがボロボロ
雫を落として恋を
殴っていた。
「…恋ちゃん、お願いだから死ぬなんて言わないで…。恋ちゃんが死んでしまったら私たちどうすればいいの?私たちには恋ちゃんが必要なの。だからお願い、死ぬなんて…」
母さんは恋を強く
抱き締めていた。
まるで、行かないでと
繋ぎ止めるように。
恋は声を張り上げ
泣き続け、ありがとうと
ごめんなさいを
何度も何度も言った。
その時母さんが恋に
なにかを囁いた。
俺と父さんには恋の泣き声で
聞こえなかった。
恋は何度もうなずいて
そのまま寝てしまった。