茜子が肩越しに僕を見た。


「こないだもそうだったけど、お前は何が言いたいんだ?」


「こないだ?」


「僕のクラスに来ただろ、お前。久しぶりって言って」


思案げに視線を宙に泳がせる。


僕は構わず続けた。


「『君もあの人を追う』とか、あの人ってのはバカ姉の事を言ってたのか?」


「そうだけど。君は結局あの人、南(みなみ)さんと同じ缶蹴同好会に入った」


南。


神奈河 南。それは僕と四つ離れた姉の名前だ。


だけどもう、その姉はこの世にはいない。


死んだのだ。二年前に。


事故死だった。


「僕は別にバカ姉を追って入部した訳じゃ」


「知ってる」


僕の言葉を遮るように言い放つ。


「あの時は、君が南さんを追ってると思ってた。けど、違かった」