「『ハーフちゃん』…。あそこで喜んでる『葡萄園 フランシア』先輩の事ですか?」


『彼』は答えず、彼等缶蹴同好会の方を見た。


各々が勝利に喜び、その中心には彼の『伝説』の弟。


『彼』はそこにかつて全国を制した時の自分を映した。


弟は『彼』。


そして愛弟子の活躍を喜ぶ桃東は『南』。


『彼』は思う。


帰れるのなら、自分もあの頃。


青春のただ中にいた頃に帰りたいと。


敬愛する師匠がいた。


尊敬する先輩がいた。


競う同級生がいた頃に。


だが、願っても叶わない。


叶うわけない。わかりきってる事だから…。


だから、帰りたい。


「会長」


それは茜子の声ではない。


見上げると頭上には三人が立っていた。


「帰りましょう。会長」


里生が『彼』に手を伸ばした。