「おいおい、怒るなよ」


「別に怒ってなんかいません」


しかし声は明らかにトゲを纏い敬語は拒絶を内包している。


「酷いな。…で、今は試合中じゃないのか?」


「そうですが?」


「ならば何故お前は今こんな所にいる?」


「勝つ為、です」


勝つ、為?


勝つ為に廊下を走ってるだと?


何をバカな事を言ってるんだ。


頭でもやられておかしくなったのか?


「信じられなくても構いませんよ。ただ邪魔だけはしないでください」


そう言って弟は加速する。が。


これ位の速度なら全然ついて行ける。


「信じないわけ無いだろ!?」


「は?」


怪訝そうな表情の弟君は警戒を強めたようにも見える。


「一応、俺は味方だよ。ま。『勇者』のだけどな」