だが、何故?


何故、奴は廊下を疾走している?


今は授業。もとい缶蹴同好会と生徒会の試合中。


それなのに…。何故?


西木にはわからなかった。


いや。今まで、缶蹴りに生きる者達の事など理解した事なんてない。


『雷姫』の事。『終者』の事。


それに、『勇者』の事さえも。


西木は考える事を止めた。


「……西木。何をしているんだ?席に座りなさい」


嗄れた声がそんな事を言った。


気が付けば西木は立ち上がり、クラスメート達の視線を集めていた。


けど不思議と気恥ずかしさはなかった。


「すいません、ちょっと。…出ますっ!?」


「に、西木!?どこに行くんだ!?待ちなさい!?」


教師の声を背に、西木は教室から飛び出し。


「…いた」


西木は今し方走って行った『伝説』の弟の背を追い始めた。