「がぁっ!?」


遅れて届く悲鳴。


フランシア先輩が朝日部の腹部に拳を叩き込んだのだ。


一瞬の事で僕はおろか、今まで圧倒していた朝日部さえフランシア先輩の動きを見切れなかったのだ。


朝日部が地面に落ちる。受け身はない。


意識は失ったものだと思ったが「ガハッ」と咳をする所を見るとそうではないみたいだ。


そんな、苦しそうに転がる朝日部をまるで幽鬼が如く茫洋と見下ろすフランシア先輩に。


僕は掛ける言葉が見つからない。


けど僕の目はひたすらにフランシア先輩を捉え続けた。


「神奈河、……朝日部の言ったことは全部。本当だ」


ポツリと呟くように言ったフランシア先輩の目に僕が映った。


「私をかばったせいであの人は、死んだんだ」