マナーモードにした携帯が、手の中でブルブルと震え、闇の中で静かな音を立てる。


かほはすぐに開けて見た。



『思い出すよ・・・』


目に飛び込んできたのは

絵文字も使われていない、切なそうな一言だった。

すぐにまた聞き返す。


『どんなこと思い出す?』



『楽しかったことや幸せだったことかな』

今度は絵文字入りだった。


調子づいて更に続ける。

『彼女のこと、真剣に愛してたんだ?』


『もちろん、愛してたよ・・・・・』



かほは携帯を胸の前でギュッと握りしめた。



やっぱり嘘じゃなかったんだよね?


遊びなんかじゃなかったよね?



涙が自然と頬を伝っていった。


その一言に、今までの悔しさも憎しみも、溶けて流れていくように思えた。



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