「………ね!
…あ………ね!
絢音っ!」
ハッと我に帰る。
「どうした?」
目の前に座る婚約者の高須誠一が不思議そうな顔をして聞いた。
「な、何でもない。
ちょっと考え事してただけ。
何だった?」
「いや、なんかぼーっとしてるから。
仕事のこと?」
「う、うん。まぁそんなとこ」
言えない。
コウキのこと考えてたなんて。
「働きすぎなんだよ、絢音は。
まぁそれも結婚するまでだけど…
あんまり頑張りすぎるなよ」
「そうだね…」
いつ運ばれてきたのかも曖昧にしか思い出せない、メインの魚料理はすっかり冷めてしまっていた。
.