「寒い!寒いよー」



彼女はそう言って肩を縮ませた。

「今日から12月だもんなー」
「雪降らないね………」




朝の空気が肌を刺すように冷たい。
僕は隣を歩く彼女を見て、
「かなこ、スカート短くして寒くねーの?」
と言った。

「寒い!けど大丈夫」
と彼女は笑った。


下ろせばいいのに、と言おうとしたけれど
小さい男のように思われたら嫌だから飲み込んだ。

しばらく歩くと、彼女は左手の手袋をとって僕の手を握った。

小さくて、暖かい手。







隣を歩いているのはかなこ。

僕の彼女だ。


かなこと僕は付き合ってだいたい一年になる。

元気で明るいかなこと、根暗で地味な僕。


始めは周りから驚かれ、からかわれた。




「みんながどうせ長く続かないって」
一年前の冬の日、かなこは僕の隣で言った。
ネガティブな発言とは裏腹に、彼女の表情は楽しそうだった。

「そう言われると、意地でも別れない!って思わない?」

彼女は笑った。

その顔は可愛かったけれど、僕自身もどうせ続かないと思っていた。

しかし、今日も僕の隣には同じ笑顔がある。