だけど今のあたしには理性が働かず、欲求のままに体が動く。
あたしは神崎涼に貪欲だ。
神崎涼のことは何でも知りたいと思ってしまう。
たとえ、それがあたしにとってマイナスなことであっても首を突っ込むだろう。
「・・・ああ―――・・・だろ」
「まぁ・・・――――ぃ・・・違・・・」
ドアを閉めてるからなのか、奥のほうで話してるからなのか。
何にせよ、途切れ途切れにしか聞こえない。
「お前の―――・・・噂、いいの―――」
・・・噂・・・?
「―――ぃや、言わせて・・・・・・いぃ―――」
これは・・・神崎涼の声。
・・・『言わせておけばいい』・・・?
あやふやだけど、確かにそう言った気がする。
話の主旨がつかめないけど・・・つまり。
神崎涼に関して、嘘の噂が出回っていて。
でも神崎涼はそれを深く考えてなくて、別にどうでもいいと思ってる。
ってことなの?
あくまであたしの勝手な解釈だから、本当はどうなんだか知らないけど。
聞いた限りでの、精一杯の解釈。
そして、それからもしばらくの間、盗み聞きを続けていたら・・・。
ガラッ
いきなり準備室のドアが開いた。
その豪快な音を聞いた瞬間、あたしの肩と心臓が大きく揺れる。
とっさにその場に背を向け、ケータイ片手に教室へと歩き始めた。
何事もなかったかのように、ケータイの画面を見続ける。