『え?』の一言しか出てこない。
だってありえないでしょ。
思わず目を見開く。
『藤井』
そう書かれたのは、廊下側の1番前の席。
隣に表記されている名前は当然のことながら、
『神崎』
の2文字。
しばらく瞬きをすることさえ忘れて、黒板に書かれているその2つの名字を交互に見ていた。
教室のざわめきが遠く感じた。
いきなり、温室の中にいるような暑さがじわりと体を包む。
開けっ放しの窓から入ってくる風も生ぬるい。
今のあたしの体に、なんら影響を与えることはなかった。
いつの間にか、夏はこんなにも近づいていたんだ。
ぼんやりと頭の中で、そう思う。
嵐を連れた夏が来る―――――。