「で、流菜ちゃん達はなにしてんの?」
ゆっくりと歩いて近づきながら、尾崎君が流菜ちゃんに聞き返す。
「んー?見たまんまだよ、テスト勉強ー!」
流菜ちゃんがニッコリと答える。
すると思わぬセリフがあたしの頭上を通過した。
「ふーん、別に倉橋は勉強しなくていいんじゃねぇ?」
尾崎君とは違う声音。
一瞬目を見開き、息をのむ。
声のしたほうを見ると予想通り、それは神崎涼の声。
・・・・・・神崎涼が佳耶に話しかけてる・・・?
そのできごとに、あたしはびっくりするほかなかった。
流菜ちゃんも尾崎君も目を丸くして神崎涼の方を見ていた。
だって、あの神崎涼が?
あの佳耶に?
ごく自然に話しかけてるんだよ?
「そんなことないよ。あたしも勉強しなきゃ成績落ちるから」
そして佳耶までが、神崎涼に対して普通に返事をしてるんだよ?
適当にあしらってるとか、気だるげに言ってるとかじゃなくて。
友達に接するかのように、ごく自然に言葉を返してるんだよ?
しっかりと神崎涼の目を見て。
ねぇ佳耶。
あたし神崎涼のこと気になってるんだよ?
あたしの知らないところで神崎涼と仲良くなったの?
待って、やめて。
醜い気持ちが渦まいて、どんどんあたしを支配していく―――――