周りの生徒がこっちを見ているのもお構いなし!
心が弾むのを抑えることができない。
知らない生徒にも、この紙を見せびらかしてやりたい気分。
「南美、にやけすぎ。ていうかまだ基本の問題だから、これ。もっと難しい応用問題解いてから喜ぼうよ・・・」
溜め息をつきながらも、佳耶の口調は優しい。
だって嬉しいんだもん!
にやけるのだってしかたないんだもん!
「じゃあ、もうそろそろ帰る?なんか雨降ってきそうだし」
佳耶はそう言って窓の外を見た。
もう6月に入って数日経っていて、テストまであと2週間になった。
ほんの1週間くらい前までの晴天がまるで嘘のように、今の空は厚い雲に覆われている。
季節は本格的に梅雨に入った。
教科書などを鞄に詰めて、3人で玄関まで歩いた。
あたし達とテスト勉強するようになってから、流菜ちゃんはあたしと佳耶と途中まで一緒に帰るようになった。
玄関を出て、あたしは空を見上げた。
灰色の重たい雲は、今にも空から落ちてきそう。
あたしの今の気持ちと天気は正反対。
空を見上げているだけで、気分が落ちてきそうだった。
意識的に空から目を逸らす。
そのとき・・・。
ポツッ
「?」
額に水滴が落ちてきた。