戸惑うあたしの言葉を無視して、神谷くんが空いている方の手である右手を、あたしに伸ばしてきた。
逃げようにも後ろは壁で、あえなく神谷くんの手に捕まるあたし。
神谷くんはあたしの耳に手を持っていき、マスクを外す。
途端に、顔を隠すものがなくなって、あたしはあわあわと目を泳がせる。
そんなあたしの顔を見つめ、神谷くんはやっぱりあのムカつく微笑で。
「…先輩、顔赤いですよ?」
「だ、だって花粉症だし熱あるし!」
慌てて弁解するあたしだけども……。
……何故に弁解する必要がある…?
なんてちょっと思ったけど、それは今深く追求する重要性はない!
…と、あたしの頭は判断したらしく。
「なんでマスクを取る必要があるのかな!?」
あたしの頭の中では、そこが今一番追求しなければならない事柄だったらしい。
当然だけどね。
うん。