「……そんな力があったら、こんな苦労しませんって」



「む?」


意味がわからなくて聞き返したあたしに、神谷くんは

「いえ、なんでも」と答えて、目線を逸らした。


そこで沈黙と言う名の生き地獄が。


神谷くんは何も言わずにそこに居て、あたしも黙ってここに居る。




…………。




「……あのー…神谷くん?」


耐え兼ねて、あたしが先手を切ってしゃべったら、神谷くんはあたしへと視線を向け、


「なんですか?」


普通にそう答えた。

あたしは今一番、神谷くんに聞かなければいけないことを口にしてみる。