刻々と過ぎる時間、ただ立ちすくんだまま氷室さんの姿だけを捉える。

この沈黙は、肯定の意味なの?

絡んだ視線に、氷室さんが小さく息を吐いた。


「…ねぇ、紫音。キミはその噂、どう思ってるの?」


どう思ってるの?って…
答えないあたしに、氷室さんは続ける。


「毎日あれだけ僕に構っておいて、ただの噂にキミは振り回されて弱気になるんだね。
……僕にはキミの質問に、答える義務も理由もない。」


冷たく言い放たれた言葉に、やっぱり胸は痛くて。

でも、たとえ根拠の無い噂にだって、あたしでも振り回されるし、弱気にだってなる。

だって、毎日頑張ってるのはあたし一人。氷室さんは全然マトモに向き合ってもくれないでしょう?

……―――でも、だからこそ。


「ありますよ。あたしが氷室さんを大好きだからです。これは理由に、なりませんか?」


ちゃんと確かめたい。
義務も理由もないなんて、そんな悲しいことは言わないで。