「…紫音、いきなり何…」

「お願いです。ただ、真偽を確かめさせてください。」


口を開いた氷室さんの言葉を遮るように訴えれば、鋭くあたしを捉えた氷室さんの切れ長な瞳。

刹那、氷室さんは小さく苦笑を零した。


「まったく…。キミはいつも人の話を聞かないね。 で?僕に何を確かめたいの?」


どうやら伝わった、あたしの真剣さ。
机の上で手を組む氷室さんを見て、あたしは覚悟を決める。

何が事実でも、たとえ噂が本当であっても、それ以上であっても。

あたしはあたし。
今まで通り、何一つ変わらない。


「噂、で聞いたんですけど…。
氷室さん、鈴木さんとつき合ってたって、今もアプローチされてるって、……本当ですか?」


訪れた沈黙に、壁時計の秒針の音だけが、妙に大きく響いた。