どちらかが、嘘 を つ い て い る 。
いや、もしくはただ、どちらかが勘違いをしているのかもしれない。

でもさすがに今の状況じゃ、そんな勘違いのしようも無いだろう。

だから、どちらかが間違いなく嘘を言っているのは明らかで。親友といとこ、そしてこの機会に仲良くしましょうとあたしに言った鈴木さん。あたしがどちらの言い分を信じるのかなんて、そんなの決まっている。

だけど、何で?
何で鈴木さんがあたしに、そんな嘘をついたのか。一瞬は脳裏を過ぎったその問いも、改めて考えるほど、あたしは鈍くは無い。

だって本当に、あたしと会長が付き合っていたんだとして。鈴木さんが今のあたしに、そんな嘘をついた理由なんて、知れているじゃないか。

そして、思い出せない故勝手に構築されていく推測が、最大の憶測を生み出した。

…――鈴木さんはただ、会長が好きで。
記憶をなくす前のあたしは彼女にとって、邪魔にしかなり得ない存在だったのだ、と。