ぐるぐる、ぐるぐる…
そんな擬態語がぴったり合うように、巡り続ける見えない記憶。

きっとあたしは、一番大切な何かをまだ思い出していない。ただ漠然とそんな気がして、ギュッと強く拳を握りしめた。


「……ねえ、隼人。」


さっきの隼人の言葉を噛み締めるように、ゆっくりと紡がれた世奈の声に再び耳を傾ける。刹那、「んあ?」というような、隼人の声が聞こえた。


「本当に、紫音に対して恋愛感情は持ってないの?」

「…さっきも言っただろ。だから世奈は、心配する必要も不安がる必要もねぇよ。だいたい、俺が紫音を好きなら、あいつの恋の応援も協力も、してやるわけねぇじゃん。」


…――え?

そう言った隼人の笑い声が、何だかやけに遠く聞こえる。

だって、何? あたしの恋?

ズキン、と、今までに無いほど強く胸が痛んだ。