わからないことが多すぎて、気持ちが悪い。語られていることはあたしのことのはずなのに、まるで他人の話を聞いているような気分だ。

ドア一枚隔てた向こう側、そんなあたしの心境を知る術もなく、隼人は続ける。


「やっぱり、世奈も“え?”って思うだろ?まぁ、そんなあいつの気持ちはわからなくもねぇけど、あの状況、さすがにちょっと妬けた。」

「……嫉妬?」

「そ。だから思わず嘘ついちまったり、心配してた氷室に“紫音をそっとしておいてほしい”とか言って、連絡させないようにしたり。……我ながらガキくせぇし、紫音にはわりぃと思ってるけど、あん時は俺も頭に血が上ってたんだよな。」


そして、あはは、と漏れた隼人の苦笑。
でもそんな、やっぱり意味がわからない。

会長があたしを心配してたって?
何で、どうして……。あたしが記憶を失くしただけで、あたしと会長の間には、何か接点があったの?