「……さぁ。紫音、何て言ったの?」
「“どうして、隼人なの……?”」
「え?」
恐る恐る、とでもいうように、隼人に問い掛けた世奈の声が耳に届く。そしてそれに隼人が答えた刹那、
え?
まさに、世奈が口にした言葉と同じ言葉が、口をついて出そうになって、慌てて口を閉じた。
だって、あたしが隼人の前で泣いた、そんな醜態を晒したこと自体、自分が信じられないのに。
助けに来てくれた隼人に、あたしはそんな酷い言葉を吐いたの?
だいたい、どうしてあたしが閉じ込められたのかわからないし、そのときあたしに何があったのかさえ思い出せないけれど。
どんな状況であれ、隼人が来てくれて嬉しくない訳が無かったはずなのに。
第一、隼人に“どうして”と聞くくらい、あたしは誰が来ることを期待してたっていうのよ。