「それなのに紫音、あの日俺が助けだしたとき、あんなに泣いてた。普段俺の前じゃ、滅多に泣いたりしねぇのに。
でさ、ただでさえその状況に焦ってた俺を前にして、あいつ、何て言ったと思う?」


でも、さっきの声色から一変、まるで絞り出すように、苦しそうに紡がれる言葉に、思い出せない記憶が頭を巡った。

ズキン、とまた、頭は鈍い痛みを放ったけれど。そのかわりにまた、少しの記憶が思い出された。

視界を遮る、薄暗い闇…

肌寒くて閉塞された空間、カチャリと小さく音を立てて閉められた鍵…。

ただ漠然と浮かんできたそれらと、わき上がってきた孤独感が何故か怖くて。

そのイメージを追い払うように、思い切り頭を横に振った。