話されているのは、未だあたしが思い出せない記憶……。

世奈や隼人からいつも教えてはもらえず、鈴木さんも教えてはくれなかったもの…。

そう思うと妙に改まった気分になり、思わず姿勢を正して隼人の次の言葉を待った。

――そして。


「…たとえ、紫音が俺の恋愛対象じゃないとしても、紫音が俺にとって大切であることに変わりねーんだ。何があっても。」


徐々に紡ぎ出されていく言葉、隼人の気持ち。あたしを大切だと言う、初めて知った隼人の本音が優しすぎて、嬉しすぎて、少しだけ胸が痛んだ。

だけどその言葉一つ一つが、あたしの記憶を取り戻す手がかりになりそうな気もして、細心の注意を払いながら耳を傾ける。