「………嘘?」

「そう、嘘。会長は紫音のことを探してなんかいないって、鈴木さんと一緒に居るって……。あのときの紫音に、こんな嘘つく必要なんてなかった。」

「あぁ、そのことか……。」


訪れた沈黙に、世奈の言葉が何度もリフレインされる。
でも。どうしてそのことが今、世奈と隼人の間で問題になっているのかがわからなかった。

だってもし仮に、例え本当にあたしが閉じ込められた事実があったとして、鈴木さんと付き合っている会長が、あたしなんかを探さずに鈴木さんと一緒に居るのは当たり前でしょう?

それが隼人によって作られた嘘だったとしても、会長と何も関わりの無いあたしが、それによって被る被害など無いのだ。