仕方ない、カバンは諦めよう。
明日の予習とか困るだろうし、弁当箱の中身がどうなるか恐ろしいけれど。
今、あたしが踏み込んでいい場面では無いことくらい、何となくわかる。
――でも。
「あたし、もどかしいの嫌いだから、単刀直入に聞くよ?……隼人、何であの日、紫音が資材置場に閉じ込められた日、紫音にあんな嘘ついたの?」
帰ろうとそっと腰を上げた刹那、耳に飛び込んできた言葉に思わず動きが止まる。
だって、ただでさえこの気まずい雰囲気の中、あたしの名前が出てきたこと自体信じられないのに、閉じ込められたって、隼人があたしに嘘をついたって、一体どういうこと?
それもあたしが失った記憶の一部?
あまりにも理解が追いつかなくて、再びその場に腰を下ろし、そっと二人の会話に耳を傾けた。