「なぁ、世奈。俺に話って何?」

「…うん。あたし、隼人に聞きたいことがあってさ。」


ドア越しでも、しっかりと聞こえる声。
どうやら世奈の用事っていうのは、このことだったらしい。

隼人が制服じゃなくジャージを着ていることから、世奈は恐らく何かの話をしたいが為に、部活あがりの隼人を呼び出したんだと容易に推測できた。


「へぇ。…で、何?」


世奈にそう問いかける隼人の声を聞きながら、このまま二人の話を聞いていていいのかと、ふと脳裏に疑問がよぎる。

別に、立ち聞きが趣味な訳じゃない。
ただ教室の中にあるカバンを、取りに行きたいだけ。

だけど、二人を包む雰囲気があまりにもギスギスしている感じがして、何だか中に入るのは憚られた。