――そして。


「私、会長と付き合っているの。そのことが、あなたの失くした記憶の主な内容よ。」


そう言い、まるであたしを嘲笑するように、嫌らしく口角を吊り上げる。

一方あたしは、というと、あまりにも端的に示された事実に、ただ茫然自失状態だった。

だって、まさか。
忘れた記憶がそんな内容?

自分が関わっているならまだしも、他人の色恋沙汰の記憶を失くした、だなんて、意味がわからない。

でも、にわかには信じがたい、その不明瞭な記憶について、考えれば考えるほど動悸は早まっていく。

そして鈴木さんの、あたしに向けられる貼付けたような笑みに、ズキンと胸が痛んだ。