「そんな顔、しないでよ。ただ、私はあなたのことが心配なだけ。……で、どうなの?少しでも記憶は戻った?」


そして紡がれた問いに、さらに疑念は増していく。本当に彼女があたしを心配してくれているのなら、あたしの考え過ぎなら、それはそれでいいのだけれど。


「……まだ、何も。」


そうあたしが答えた刹那、微かに、でも確かに浮かべられた笑みに、何か裏があるんじゃないかと疑わずにはいられなくて。


「…そう。あなたの友達は、あなたに何も教えてくれないの?」

「鈴木さんには、関係ないよ。」


突き放すように冷たくそう言い放ち、彼女に背を向ける。
だってこれ以上、彼女に話すことなんてない。それに、失った記憶に関して詮索されるのもごめんだ。

だからいつのまにか静まっていた廊下、再び足を踏み出した。