そして段々潤んでくる視界が、楽しそうに口元を歪ませる鈴木さんの姿を捉える。
悔しさからか憎しみからか、強く彼女を睨みつけた。

鈴木さんにだけは、絶対に涙は見せたくない。だってそれは、自分の負けを、自ら認めるようなものだと思うから。

涙が零れないように、強く握り締める拳。
そしてあたしはそのまま、何も言うことなく二人に背を向けた。


「待ちなよ、紫音っ!」


後ろから聞こえる声なんて、もう知らない。
あたしを追いかける足音に追いつかれないように、必死で階段を駆け降りる。

何なの、どうして。

何でちゃんと向き合おうとしていたのに、こんなことになっちゃうの。

そんな思いばかりが心を占めて、張り裂けそうで。ギリッと奥歯を噛み締めるやいなや、堪え切れなくなった涙が頬を伝った。