「ひ、むろ…さん?」


定位置から大きくズレた、氷室さんの机。傍らには、倒れた氷室さんの椅子。

そして、“誰か”を受け止め、ズレた机に凭れ掛かるようにしていた氷室さん。

そこまでは、まだいい。
さっきの大きな音の理由も、その“誰か”を受け止めて倒れた拍子に机がズレ、椅子を倒してしまった、で説明もつくから。

――だけど。

だけど何で、その“誰か”が鈴木さんなの。
この場に、鈴木さんがいるの。
…否、居るだけなら、受け止められているだけなら、まだ許せた。

でもこの状況、どうしても許せそうにも無いし、信じられない。というより、信じたくも無い。

だって、そうでしょう?

まるであたしが来るのをわかっていたかのように、あたしに見せ付けるように。

あたしがドアを開けた瞬間、受け止められている姿勢から氷室さんにキスする姿を、どう受け止めればいいっていうの。