軽く目を閉じ、数回息を吸って、吐いて。乱れた呼吸を正す。

そしてゆっくり目を開いてノックをしようと右手を伸ばした刹那、中からガタンッと大きな音が響いた。それと同時に、ぴたりとあたしの動きが止まる。

今の音は、何?
何かが倒れた? ぶつかった?
――ああ、何だか 胸 騒 ぎ がする。

でも、何があったのか確かめずにはいられないし、何たってあたしは、中の氷室さんに用があるのだ。

時間にして僅か数秒の脳内での葛藤の末、ノックに伸ばしかけた手を今度はドアノブに伸ばす。

さっきとは比べものにならないくらい高鳴る鼓動に気づかないフリをして、小さく息を吐いた。

――そして。

カチャリ、と小さく鳴った音。
開かれたドアから見えた光景に、自分の目を疑った。